ヒヨコの育て方(初生ヒナ導入編)

ヒヨコの飼い方 産まれたばかりの初生雛
ボリスブラウンのヒヨコ(オス)

産まれたてのヒヨコはとても可愛いものですね。
永光農園では年に6回、ヒナを導入します。
しばらくの間、大ビナという120日齢のヒナを導入していたのですが、今年の春からまた初生雛を導入することになりました。
これまでは人手不足で、初生ヒナの世話をする時間が確保できなかったので、大ビナの導入となっていました。
今年からは社員も増えて時間に余裕ができたので、久しぶりの初生ヒナの導入です。


この記事では産まれたばかりのヒヨコ(初生雛)の育て方を解説します。
丈夫で健康なヒナを育てることで、質の良い美味しい卵を産んでくれるようになります。

ヒナの品種 何を選ぶべきか?

ヒナの品種はボリスブラウン

ボリスブラウンの成鶏
ゲン・コーポレーションHPより

永光農園では現在ボリスブラウンという鶏種を導入しています。
ボリスブラウンはアメリカのハイライン社で育種された鶏種。
いわゆる赤玉鶏と呼ばれる褐色の卵を産む鶏です。

永光農園では以前「もみじ」という純国産の鶏種を導入していました。
国産の鶏種であることから長らく採用していたのですが、近くの孵卵場での扱いが終了してしまいました。
そこで、現在のボリスブラウンに切り替えることになったわけです。

ボリスブラウンのヒナなら、車で1時間足らずのところにある、北海道由仁町「岩村ポートリー」まで直接取りに行けます。
これが「もみじ」の場合になると、産まれたばかりのヒヨコは、岐阜にある後藤孵卵場から飛行機で運ばれて、北海道まではるばるやって来ることになります。


やはり、産まれたばかりのヒヨコをなるべく早く農場に迎え入れたいとの思いから、近くの孵卵場に直接取りに行くことのできるボリスブラウンに切り替えたのでした。

ボリスブラウンは大人しく、人懐っこい

ボリスブラウンの取扱メーカーのゲン・コーポレーションによると、ボリスブラウンの特徴は以下のように記載されています。

抜群の産卵性、均一で濃い卵殻色・褐色卵鶏

アメリカのハイライン社で育種開発されたボリスブラウンは、最も卵殻色が均一な赤玉鶏です。抜群の産卵性を持ち,最適な卵重にいち早く到達します。飼料効率、ハウユニットが優れ、それに高い生存率が加わり、ボリスブラウンは最高にバランスがとれ、採卵養鶏家に最も利益をもたらす赤玉鶏です。

ゲン・コーポレーション公式サイトより https://www.ghen.co.jp/lineup.html


メーカーの売りは

・卵殻色が均一なこと
・産卵率が高いこと

のようですね。

永光農園では殻の色の均一さはそれほど重視しませんが、ボリスブラウンはとても大人しく、人懐っこい性格ですので、飼いやすいです。
とても好きな鶏種です。
なにより近くで孵化(卵から孵る)のが魅力です。
産まれたばかりのヒヨコが長旅をすると、弱ってしまうこともあるからです。

ボリスブラウンの飼育管理マニュアルはメーカーHPからダウンロード可能

ボリスブラウンの日本での取り扱いメーカーのゲン・コーポレーションの公式サイトでは、ボリスブラウンの飼育管理マニュアルがダウンロード可能です。

とても親切ですね。
このマニュアルは飼養管理、温度管理、点灯管理など非常に詳しく書かれていて、ボリスブラウン以外の鶏種でも参考になると思います。

この記事でも、この飼育管理マニュアルから随時引用します。

ダウンロードはこちらから可能です。

ボリスブラウン飼育管理マニュアルダウンロード >

初生ヒナ受け入れの準備

育雛箱
永光農園の育雛箱

育雛箱とは?

育雛箱とは初生ヒナ(産まれたばかりのヒナ)を育てるための箱です。
産まれたばかりのヒヨコはまだ自分で体温を保てない温めてあげないといけません
そのための箱を用意する必要があります。
この育雛箱はヒヨコを温める母鶏の代わりになる重要なものです。

育雛箱の寸法
図1:育雛箱の寸法

育雛箱はコンパネとタルキで簡単に作れる

図1のように、コンパネを12cm幅で切断し、90cm×12cmの板を4枚作ります。

これに、3cm角のタルキを長さ24cmに切断した足を取り付けます。

そうすると地面から12cmの高さの隙間ができますが、ここがヒヨコたちの出入り口になります。

この育雛箱は四面開放型です。
四面開放型は、通気が良くなるメリットがあります
その反面、温度が逃げやすくなるデメリットがあります。

この寸法の育雛箱で、初生ヒナ100羽〜150羽を育雛可能です。
ちょっと無理をすると200羽でも大丈夫かもしれません。

今回永光農園ではこの育雛箱を3つ作成しました。

育雛箱のフタと温源
図2:フタに100Wのレフ球を2個取り付け

電球で暖かさを調節

図1で作った箱に合うように、90cm×90cmのフタをコンパネを切断して作ります。(図2)
ちょうどコンパネを真っ二つに切断ですね。

このコンパネに100Wのレフ球を2個取り付けます。
合計200Wですね。

これがヒヨコを温める温源になります。

今回入雛日が4月7日ということで、ここ札幌ではまだまだ寒いので200Wにしました。
このあたりは気温との兼ね合いで調整します。
気温が高ければ、60W2つでもいいですし、さらに40W2つでもいい場合もあります。
ヒヨコが入ってからも調整可能です。
200Wで暑いようなら、1つ消して100Wにしたりです。

永光農園ではレフ球という反射鏡が付いていて、前方のみに光を飛ばす電球を使ってますが、その理由はヒヨコのいる場所に効率よく熱を当てられると思うからです。
レフ球がなければ普通の白熱球でもいいでしょう。
ただし、熱が出ないので蛍光灯はNGです。

また、ヒヨコの成長に応じて、電球は弱めていきます。
体が大きくなり、羽も伸びてくると、自ら保温できるよになるからです。

ここでヒナの成長段階による育雛温度の目安を、ボリスブラウンの飼育管理マニュアルから引用します。

育雛温度表
引用:ボリスブラウン飼育管理マニュアル(ゲン・コーポレーション)

今回作成した育雛箱では、前日に電球直下での温度を測ったところ、35℃でした。
ただし、ヒヨコが育雛箱に入れば、ヒヨコ自身から出る熱で、実際にはもっと高くなります。

ヒヨコは温源からの距離で暖かさを自分で調整するので、マニュアル通りの温度になっていなくても、あまり神経質になる必要はないでしょう。

理想的な育雛の図
図3:育雛箱内部の温度分布

図3をごらんください。
電球直下が高温でも、ちょうどいい温度帯がドーナツ状にありますので、ヒヨコは自分で快適な暖かさのところに移動するのです。

育雛箱のヒヨコ
電球直下のヒヨコの様子

写真は入雛直後の初生ヒナの様子を育雛箱のフタを開けて撮影したものです。
寒いので電球の真下に集まり、身を寄せ合って暖を取っています。
やがて温まってくると、ヒヨコは図3のようにドーナツ状に広がるでしょう。
もし、ずっと写真のように電球直下に身を寄せ合ったままだと、温度が足りていないということです
電球のワット数を高いものに替えたり、後述するように、チックガードの上に保温ビニールを被せてやる必要があります。

湿度対策 土間の場合は不要

今回の育雛は土間で、地面の上での育雛となるため、特別の湿度対策はしません
地面から自然に湿気が上がってくるからです。

地面がコンクリートで覆われている場合は、湿気が上がってきませんので、散水などして乾燥を防ぐ必要があります。
温源にガスを使う場合はガスの燃焼によって水蒸気が発生するのであまり気を使わなくてもいいですが、電球を使う場合は乾燥しやすくなります。
ヒヨコの体は小さく、水分も失われやすいので、湿度に気をつける必要があります。

育雛箱のビニールのれん
ビニールのれんをくぐるヒヨコ

育雛箱にはビニール暖簾を

育雛箱にはビニールの「暖簾」を取り付けます。
これは、育雛箱の中の温度を外に逃さないようにするためです。
永光農園では、寒さの厳しい北海道であることを考え、ビニールを外側と内側の二重カーテンにしています。
画像ではわかりにくかもしれませんが、コンパネの厚さ1.2cmを間に挟んで、内側にも同じ長さでビニールを垂らしています。
このことによって、間に空気層が出来、保温性が高まります。

ビニール暖簾の高さは、ちょうどヒヨコがくぐって頭が触るぐらいの高さです。
今回は、おおよそ、地面から6cmぐらいの高さで調節しました。
これも外気温を考えて調節します。
低ければ低いほど保温性は高まりますが、ヒヨコが出入りしにくくなります。
中に入ることが出来ないと寒くて死んでしまいますから、あまり低くしすぎないでください。

そして、暖簾と同じように切れ目を入れます。
これも、ヒヨコが出入りしやすくするためです。
上の画層の矢印の先をよくごらんください。
ちょうどヒヨコが暖簾をくぐってヒヨコが出てくるところです。
この暖簾は母鶏と同じようにヒヨコを寒さから守るというわけです。

育雛箱に麻袋を被せて保温

上の画像でわかるように、育雛箱に麻袋を2枚被せています。
これも上へ逃げる温度を遮断し保温するためです。

被せるのは毛布でもなんでもいいのですが、麻生袋は大きが丁度よく、保温性があり、さらに通気性にも優れているので、永光農園では麻袋を使っています。
この麻袋はお米や小麦を入れるためもので、60kg用です。
ホームセンターでも売ってますし、ネット通販でも手に入ります。
もし手に入らなければ麻袋にこだわる必要はありません。

地面にも麻袋を敷いて土埃を防ぐ

また画像でもわかりますが、地面にも麻袋を敷いてやります。
理由はホコリを抑えるためと保温のためです。
ヒヨコは足で地面をかき回しますので、土埃が舞います。
埃っぽくなるので、これを防止するためです。
そして、敷布団と同じように保温のためです。
ヒヨコは寝るとき、お腹を地面に付けて寝ますので、麻袋の上で寝るほうが温かいのです。
麻袋を敷く範囲は育雛箱よりひとまわり広い範囲で、今回は4枚を敷きました。

地面には木材チップを

麻袋を敷いて部分以外の地面には木材チップを敷料として敷き詰めています。
鶏糞と木材チップが混ざり合うことで発酵が進みサラサラの状態になります。

木材チップは多孔質の有機物なので、微生物の生息に適しているのです。

この木材チップは、敷料専門の業者さんから仕入れています。
十勝の木材店が、敷料にするために製造しているものです。
材質は針葉樹のようです。

チックガード
ベニア板で作ったチックガード

ベニアでチックガードの手作り

育雛箱の周りにはチックガードという囲いを設置します。

チックガードはヒヨコが小さいうち、育雛箱から離れたところに行ってしまい、戻れなくなるのを防ぐためのものです。
ヒヨコは、育雛箱の中に入れば温かいということを覚えるのに少し時間がかかります。
離れたとことに行ってしまうと、迷子になって戻って来れなくなってしまいます。

このチックガードは一番薄いラワンベニア(2.5mm)を縦に半分に切断して作ります。
幅45cm×長さ180cmです。
今回は5枚使って、サークルにしています。
内側から外側に向かって木ネジを打ち込み固定しています。
内側からにしないと、木ネジの先端でヒヨコを傷つけてしまう恐れがあります。

育雛箱断面図
図4:育雛箱断面

なだらかな丘を作る

図4は設置した育雛箱の断面図です。
このように、育雛箱の中心に向かってなだらかな丘を作ってやります。
これはヒヨコの圧死を防ぐためです。
ヒヨコは寒いと電球の下のあたりで密集して温め合おうとします。
このとき、地面が少しでも窪んでいると、覆いかぶさるようにして下敷きになったヒヨコが押しつぶされてしまいます。
これを防ぐため、中央を高くしてやるのです。

育雛箱の中のヒヨコ
暖簾をめくって育雛箱内部をみたところ。中央に向かって丘のように盛り上がっている。

前日の準備

育雛箱と地面を温める

前日までに育雛箱、チックガードなどをすべて設置し終えたら、実際にヒヨコが入る前に電源を入れて、育雛箱や地面を温めてやります。

寒い時期だと特に地面は冷え切っているので、そのままだと底冷えします。
前の日から電球を点灯して、地面や育雛箱を温めておくのです。

入雛当日

岩村ポートリー建物
北海道由仁町「岩村ポートリー」グーグルマップより

北海道由仁町までヒヨコお迎えのドライブ

いよいよヒヨコがやってくる日です。
車で1時間ほどの北海道由仁町にある孵卵場「岩村ポートリー」まで迎えに行きます。
ヒヨコは通気性と保温性を兼ね備えたヒヨコ専用ダンボールに入っています
このダンボールを車に積み込み、急な動作でびっくりさせないように慎重に運転します。
途中で一度車を停め、扉を開けて空気を入れ替えてやりました。

ヒヨコ専用ダンボール

ヒヨコ専用ダンボール箱はスグレモノ

ヒヨコはこのようなヒヨコ専用段ボール箱に入っています。
1箱に100羽入ってます。
通気口がたくさん空いており、中の通気を確保しています。
重ねても大丈夫なようになっています。

ヒヨコ専用ダンボール箱の中のヒヨコ

ヒヨコ専用ダンボール箱の中では身を寄せ合って温め合う

ヒヨコ専用ダンボール箱の中は4つの区画に仕切られていて、それぞれの区画に25羽ずつ入っています。
通気口がたくさん空いていますが、ヒヨコが身を寄せ合えば、温め合うことで保温が保てる区画の大きさになっています。
4つに仕切られているのは、圧死を防ぐためと思われます。

ヒヨコを両手で掬う

両手ですくって育雛箱に移動

永光農園では両手を使って箱の中からヒヨコ5〜6羽ほどやさしく掬って育雛箱に移動させてあげます。

ヒヨコを育雛箱の中に入れる

育雛箱の中が温かいことを教えてあげる

来たばかりのヒヨコはまだ育雛箱の中に自分で入れないので、手のひらで育雛箱の中に誘導して「ここが温かいんだよ」ということを教えてあげます

ヒヨコに水飲みを教える

水飲み場を教える

5〜6羽ずつ育雛箱の中にいれていきますが、そのうちの1羽のくちばしを給水器の水に付けて水を飲む場所を教えます

本当はすべてのヒヨコに教えればいいのですが、時間がかかるので、5〜6羽に1羽の割合にしています。
他のヒヨコが水を飲んでるのを見て覚えるので大丈夫なようです。

このオレンジ色の給水器はヒヨコ専用のものです。
飲んだ分だけ下から出てくる仕組みになっています。
「ヒヨコ 給水器」で検索すればネット通販でも購入可能です。
もし手に入らなければペットボトルと植木鉢の水受け皿で自作できます

ヒヨコの手作り飲水器
給水器の自作

ヒヨコのエサの玄米

餌付けは玄米

産まれてから3日間は玄米を食べます。
固い玄米で餌付けすることで、胃腸を鍛えて丈夫に体を作るためです。

エサ箱は、卵を入れるのに使う紙のトレーを使います。
このトレーは卵40個用なのですが、このトレー1枚でヒヨコ40羽分の給餌を賄えると計算します。

産まれたばかりのヒヨコは卵と同じ大きさなので、このトレーがちょうどいいのですね。

チックガードに保温ビニールを被せたところ
チックガードに保温ビニールを被せたところ

寒いならチックガードに保温ビニールを被せる

上の画像は夜の見回りのときに撮ったものです。
4月とはいえ、雪が降るほど冷え込んだ日。
寒さ対策で、チックガードを保温ビニールで覆うことにしました。
ビニールをチックガードに洗濯バサミで留めております。

注意が必要なのは、完全にビニールで覆ってしまわないことです
必ず、すき間を作り、通気を確保しなければなりません。

ヒヨコにとって新鮮な空気は必要ですので、通気には気をつけます。

かわいいヒヨコの動画

ヒヨコの入雛様子を、You Tube動画にまとめましたので御覧ください。

初生ヒナの入雛の様子です。
5日後の様子。羽が伸びてきています。順調にすくすく育っています。

参考図書 2冊のバイブル

ヒヨコの育て方について、参考にした本を紹介します。

中島正著「自然卵養鶏法」
自然卵養鶏法 中島正著

日本における平飼い養鶏法の原点となった本。

この本から現在の日本の平飼い養鶏ムーブメントが始まったと言っても過言ではありません。

ぜひご一読することをおすすめします。

渡辺省吾著「だれにでもできる自然卵養鶏」
だれにでもできる自然卵養鶏 渡辺省吾著

こちらも良書。

平飼い養鶏法を平易に解説

中古でしか入手できないのが残念。

まとめ

  • ヒヨコを育てるのには保温が必要。
  • コンパネとタルキで育雛箱を自作。
  • 90cm×90cmのサイズで150羽収容可能。
  • ビニール暖簾を取り付ける。
  • 温源は電球で。
  • 40W〜100Wで気温によって調節。
  • 湿度管理は土間なら湿気が上がってくるので不要。
  • 薄いベニア板でチックガードを作る。
  • 圧死しないように地面はなだらかな丘を作る。
  • 寒ければチックガードに保温ビニールの覆い。
  • 産まれてから3日間は玄米を給与。胃腸を鍛えるため。
  • エサ箱は紙の卵トレーがちょうどいい。
  • 参考図書は中島正「自然卵養鶏法」と渡辺省吾「だれにでもできる自然卵養鶏」

この記事を書いた人 平飼い養鶏の専門家

㈱永光農園代表永光洋明

永光洋明
平飼い養鶏一筋20年以上。
平飼い卵の生産と販売をする㈱永光農園の代表です。
農家の5代目。

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